プレイとマッチングしていないラケットを使うことで意識的、無意識的な運動調整が行われながらボールを打ち続けることになるのですが、その運動調整幅が大きいほどミスする可能性は高くなります。
過剰、不足分を身体が調整する
パワーという点に絞って例をあげると、自分のスイングのパワーに対してラケットのパワーアシストが大きければ、身体はボールを飛ばさないように回転をかけたり、スイングを小さくしたり、当たりを弱くするような運動調整をします。
逆に、ラケットのパワーアシストが小さければ、身体はボールを飛ばすためにスイング開始時に地面の蹴りを強くしたり、筋肉のテンションを高めたり、インパクトの時にグリップ側を急激に減速するなどの運動調整をします。
つまり、身体はラケットの余っているパワー分を帳消しにしたり、不足分のパワーを補ったりとラケットの持っている性能と反対の動きをするのです。
ミスを減らす努力がミスの原因
運動調整幅が大きいラケットを使っていればいるほど、ミスをする可能性が高くなり、実際にミスも多くなります。
多くのプレイヤーはミスをするとその原因を考えます。例えばアウトした場合、打点が遅れたのか、力が入り過ぎていたのか、回転がかけられなかったのか・・・。
そして、次に対処療法的な解決策を考えます。もっと打点を前に、力を抜いてリラックスして、ラケットを下から上に、ラケットヘッドを下げてなどなど・・・。
しかし、テニスは1球として同じ状況でボールを打つことができません。そのミスが起きた状況は次にボールを打つ時と同じ状況ではないのです。
次にボールを打つ時には状況が違うので、せっかく考えた原因や対策は役にはたたないのです。仮にその解決策を実行してしまえば、それが次のミスの原因になりかねません。
なぜならば、繰り返しますが、テニスは1球として同じ状況でボールを打つことができないからです。
更なるミスの連鎖
また、原因や解決策を考えている(頭の中で自問自答している)状態を、私は「セルフトーク」と呼んでいます。このセルフトークをしている状態では、ボールの情報の認識力は落ちてしまいます。
ボールの誤った情報をもとに、身体は運動調整をしてボールを打つことになります。ボールの誤った情報をもとに運動調節され、打たれたボールは当然のようにコートに入る確率は低くミスが多発してしまいます。
プレイヤーはミスが多発すると、思い悩み「やっぱり駄目だ」「バックは苦手」などネガティブな思いを頭に巡らせて(ネガティブトーク)しまいます。
多くの皆さんが知識的にネガティブ思考は良くないことは知っていると思いますが、ある生体反応テストでは「セルフトーク」「ネガティブトーク」時には、筋肉のパフォーマンスが低下することが実証されています。
季節の変わり目には、ミスはさらに増える
プレーとラケットの相性診断時やレッスンの時には、その人のラケットを打ち「どんなフィーリングか」「どんなボールが飛んでいくか?」「どんな打球動作が引き出されるか?」などをチェックして、ラケットとその人のスイングとの関連性を観察します。
私が打っても「コートに入れるのは苦労するなぁ」「これで一試合プレイするのは神経を使うなぁ」というラケットを所有者はどうにか上手く使っています。
これを見ると人間の調整能力は凄いと改めて認識させられてしまいます。しかし、状況が悪くなるとたちまちミスが多くなるのです。
合わないラケットを使っていると、条件が整っていて目的が一定(半面ストレートでラリーといった)の状況では、意識的・無意識的な運動調整によってどうにかカバーできるのですが、ちょっと条件が悪くなり、目的が多様になるとカバーできなくなってしまいます。
また、季節の変わり目など、日によって気温の差が激しい時期はボールの飛びが大きく変わるため、運動調整でコントロールできる枠を超えることが多々でてきます。季節の変わり目にミスが多くなる、調子が落ちるといった人はラケットが合っていないと思ってもいいかもしれません。
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